高速バス乗り場

少し早めに着いたが

コンセントがある席は埋まっている

道路を挟んだコンビニで立ち読みでもしようか

いや、立ち読めないようシールが貼られていた

 

 

 

ここは、高速バス乗り場

時間を犠牲にする代わりに

お金が安くなる

現代日本において

ましては、一人の青年にとって

無くてはならないもの

それが高速バスである

 

 

 

そんなこんなで

バスの時間を待っているわけだが

なにせ人が多い

人が群れるところは

必然的に秩序が乱れる気がして

あまり好かない

 

 

 

 

 

 

一人の女性が駆け込んできた

足元はハイヒール

慣れない足音で颯爽と目の前を過ぎる

少し涙ぐんでいるようにも見える

時間が迫っているのだろう

 

 

 

恐らく、おそらく

 

 

 

彼女にとって

決意の上京であろう

彼、であるつよしは頼りのない男で

けれど、彼女は好いてしまった

ただそれだけなのだ

つよしは、半年前に上京した

ミュージシャンになるなんて

そんなことどうでもよかった

つよしと一緒にいれば

つよしのミュージシャンになるという夢

彼女は応援した

反対したのは、彼女のまわり

そしてそれは、彼女に対して

彼女というのも

告白があって、お付き合いという、そのような手に取れるような始まり方ではなかった

それこそ、こころとこころが

繋がるような

そんな始まり方に彼女は、心身高揚したのだ

そんなもの

言葉という重量を持たないものが

動かせるわけがない

彼女はつよしを好いていた

つよしの上京から3ヶ月後

連絡が減ってきた

当然不安になる

当然周りに相談をする

するとこうだ

ノストラダムスかのように

それみたことかと皆が言った

別れろ

そんなアドバイスなど求めていない

大丈夫

そんなアドバイスが、解決の糸口が察せない

そんな進歩のないアドバイスが欲しかったのだ

来たる今日

つよしに電話をかけた

つよしは出なかった

彼女の手には高速バスの片道チケットが

捨てた

仕事

友達

そして家族

全てを捨てて彼女は今東京へ行く

バスの時間ギリギリ

彼女は最後の電話をかける

バスの時間はギリギリである

彼女は止まる

「つよし愛してるから…」

そう言って

彼女は

 

 

 

 

 

 

さてさて

もうすぐバスの乗車時刻が近づいてきた

 

高速バスが、人を連れて行く

 

 

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