あめがせみにふる

novel By pegasasudon

窓を開けると雨が降っていた

雨は点だけど

降っている雨は棒で

棒は地面で点になる

 

つよしは今日もため息をついた

また無駄に人生について考えているのだ

どれだけもがこうか

当たり前にのまれていく

 

傘をささず歩いた

分解されたせみをまたいだ

傘をささない理由

それは

ただ

めんどうだから

人が見る

なぜなら

雨が降っていれば傘をさす

これは当たり前だからだ

もしくは被害妄想か

 

つよしは慣れた

こんなに便利になったのに

人間は便利に慣れない

便利に過ごそうと思った人間は

それは、別の人間なのだ

 

どうでもいい

どうでもいい

 

あなたがつよしをどう思おうが

そんなことどうでもいい

好きにさせてくれ

変なアドバイスしないでくれ

当たり前の人間がいれば

当たり前じゃない人間もいるだろう

ただ、その枠にハメて

仲良くしてくれたらいい

多くは望まない

邪魔はしないでくれ

 

つよしは嘆く

先ほども言った通りどうでもいい

自分がどう思われようがなんて

結果で右往左往されるのだから

その過程に価値がつくのはまだだ

つよしは熱くなる

 

その環境にいれば

当たり前じゃない人間がいっぱいいる

そんな環境にいれば

不便はないのだろう

しかし

当たり前の環境に埋まる

当たり前じゃない子どもが

もがく姿を見たくない

「ミュージシャンになる!」

そんな子どもみたいなことを

言い出す29歳を

ストッパーから守るように

抱きしめたいのだ

29歳には彼の人生があるじゃないか

失敗してもいいじゃないか

そのとき、やさしく迎え入れてやれよ

ほらやっぱり失敗じゃないかなんて言うなよ

冒険者の数だけ、今人類は世界へ散らばっているんじゃないか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つよしは

夜行バスに揺られ

一人熱くなる

あと10時間もすれば

東京

 


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