砂糖のような甘み
遠くに酸味がいる
皮は黒くデコボコとして
実はオレンジ
ぬるくゆるく
えぐくさわやかで
桜ではなくバラのよう
真っ暗な闇のなか
トンネルの真ん中で
外は雨
身体を小さく折りたたみ
垂れる雨音だけがほかに存在していて
髪もボサボサ
部屋が暗いから
目を開けていても
暗い
そうここは暗い
そうこれは甘い
胸に弾む明るい苦さ
それは空気を読んで去り
トンネルに沈んでいく
「ここはどこ…?」
自分で来た
覚えている
こことはどこか
甘い音
今までの記憶
果てまで
人が想像しえる果てまで
底まで
底まで
きっとそこは
ここみたい
黒い皮をむいて
出てきたそれも
黒くみえてしまう
色は脳だけが感じていて
目の前は空虚
皮から汁が飛ぶ
リンリンと音がする
どこまでもいける
飛べる
そうやって沈む
ここで生きる
甘い。
甘い。
甘い。
立ち上がりトンネルを出ると
「おかえり」