大学1年生 1話 ゆづるも桜花

「トイレで奏でてくる!」

そう言ってサイドステップ混じりに去る後姿を眺めながら、たろうは言う。

「帰ってきたら、ドの音は難しいとでも言うんだろうなぁゆづる君」

窓の外を見るよしこの前には、薫るほどの桜が咲いていた。

 

「ドの音が出ないんだよなぁ」

「やめてよそこに意味を持たそうとするの。ねぇよしこさん」

「・・・」

 

ゆづるの奇怪な行動にはなれ、よしこが無口であることに魅力を感じ始めたたろうは、中・高と特に目立つこともなく済ましていた。

 

ただ、大学では賢いグループに入り賢く生き賢く社会へ飛び立とうと決めていた。

ここで問題が生じる。人見知るたろうには、グループに潜り込むだけの勇気が無かったのだ。

着々と進む入学後の流れに乗れなかったと後悔したときには、堅固な壁を囲む肉塊が3つほどできていた。

もちろん肉でもパンでも端は捨てられるもの。

端に生きよう。そう決めたとき誰かが肩を叩いた。

 

「俺はゆづる。お前はさとしな。」

 

突然の突然に驚いたが

「ぼ、僕はたろう。さとしじゃないよ」

「なぁさとし、今から授業でグループ作るらしいからよろしくな!」

「え、あ、うん。そうなの?えーっと・・・」

と答えたたろう。

 

たろうは分かっていた。このグループは本当のグループになることを。

そして、当の目標にこのゆづるという男は、確実に邪魔であることを。

っていうか嫌いだ。

 

「んーどうしよぉ・・えーっと悪いけど。」

「こいつもいるから。」

「えっ!?」

 

眼前を覆う美女(マリア(仮)は、どこまでも美しく、口をパクパクさせるたろうは、発するリズムが刻めないでいた。ようやく。

「よ、よろしくね」

 

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