大学1年生 3話 初夏といえば

心地いい気温が過ぎ

少しじめじめする雨を嗅ぐ頃

それを避けるようにたろうの家へ向かっていた

 

「あら、急でびっくりよホントー。もうたろうがお友達を呼ぶなんてママ泣きそうに・・・。お友達と彼女かしら。」

「ちょ、ちょっと!ママのばーか。ママのばーか!お友達だよぅ。さぁ、二人とも入って。貧乏な家で申し訳ないけど。」

 

学校の帰り、朝から降り続く雨と湿気にやられて、歩くのが億劫であった。

そこでたろうが家に来るよう提案した。

二ヤリとした。

 

「さぁ、こっちが僕の部屋だよ。」

あまりにもわかりやすい謙遜のあと、家じゅうにある高そうな絵、高そうな壺に、ゆづるとよしこは目を向けていた。

「たろう、お前の部屋にも絵飾ってんだな。この絵は誰が描いたやつなの?」

「え?知らないよ。値段だけ見て買ったからね。とりあえずそこの10万円するソファに腰かけてよ。今から2000円のティーを入れてくるからさ。」

そう言ったあと、ゆづるがおもむろに絵を外しだした。

 

「え!?ゆづる君なにするんだよ。」

「たろう、よく聞け。お前はこの絵を値段だけ見て買ったと言ったな。」

「そ、そうだけど。」

「たとえば、俺が今からお前をブン殴る。お前は怒るだろうな。そしたら、下にいるマダムはお前を心配したあと、俺を非難するだろう。けど、お前が殴られた痛みは、お前にしかわからない。そうだろ?」

「そ、そうだけど関係なく・・」

「絵も・・絵も痛ぇんだよ!!」

「え、絵も痛い!?」

「そうだ。だから俺が貰うんだよ。俺はみんなの心が分かるセラピストにもなりたいからな。」

「・・・わ、わかったよ。」

 

これで、正解だよねっとよしこを見るが

うっすら笑顔を浮かべるだけだった

ザーザーと屋根を打つ雨の音に紛れ

よしこのポケットには

たろうの机の上にあった指輪が

影をひそめていた

 

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