気持ち悪い

novel By pegasasudon

吐き気がする

 

 

それは、孝雄が、人の醜さを味わったからであり、具体的に言うと、友人の恵と一日練り歩いて感じたからだ。

 

 

 

 

 

その日は、新緑がまぶしく空気も濃く香る4月の末だった

人々の格好を笑うハトの気持ちが分かるほど、チグハグな姿が目立つのは、暑かったり寒かったり、朝晩の寒暖差のせいだろう

恵と出かける理由は、高校の修学旅行に持って行く寝巻きを買いに行くためだった。恵が。

孝雄はもっぱら付き添いで、自らの時間を削って他人に尽くすなど、嫌で嫌で仕方がないが、対恵戦になると、心と身体が別のところにあるようで、恐ろしく、それを探求しようとはしなかった。

孝雄は、兵庫県の田舎に育ち、中学生へ上がる頃、父親の単身赴任についてきて、東京で暮らすようになった。

弟と母親と離れるのは少し寂しかったが、それが少しで済んだのは、東京という響きによるものである。

かくして、隣に住む恵と仲良くなることは、まるで無意識のことであったように、今表参道にきたのである。

寝巻きは、とうに購入済みであったので、孝雄のワガママで表参道にきた。

興味、興味、興味。

孝雄の胸は踊った。まるで新しい国へ来たような、そんな感覚だった。

だったのだ。

 

 

 

 

孝雄は、見た。

パンケーキを撮影する女を
胸を張ってフェラーリに乗る男を
見えない殺気を放っている女達を
群れる男達を

気持ちが悪い

急に

なんだ
なんだ
なんだ

なぜだ

誇った
表参道という人間を孝雄は誇っていた

しかしだ

欲求の化身に似た何者かを隠しているつもりで歩く人々は鏡を見ないのかそれはエグくエグくとても見てはいられないほどツギハギで雑で何がしたいのか何をどうしたいのか右へ行きたいのか左へ行きたいのかどうして真ん中でうごめいているのだドロドロとしたその衣が見えて仕方がない気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い

 

 

 

 

「孝雄…?」

 

 

 

 

孝雄は、ベンチで眠るホームレスと心から繋がりたい気持ちになった。
どうやら、恵を好いているらしい。
この欲求を孝雄は耐えることができない。
ズブズブとハマる新品のドロドロとした衣に身を包むのは、気持ちよかった。

 

 

 

 

 

 

時刻は20時36分

 

「恵ちゃん、次はどこに行く?」


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