桜がすっと散った後、人々は腕まくりをし、太陽に応える。
初々しい緑に映える木の上で、ゆづるは読書をしていた。
「ねぇ、ゆづる君。なに読んでるの?」
木の下から、口の中にある米を見せびらかすように言う。
「”超人類、人の先へ”だけど、お前次口の中の米が見えたら、退化させるからな。」
「い、いいじゃん別に!それより一緒にお弁当食べようよ~。ねぇ、よしこさん。」
「えぇ・・・」
「あれ、よしこさん。その卵焼き、中に何が入ってるの?」
「・・・・紅生姜」
たろうは、よしこの口の紅しか見ていなかった。
「たろう、超人類って何だと思う?この問いは、俺が考えないといけないんだ。だったら飯なんて食ってられねぇだろう?」
するすると木から降りてゆづるが言った。
「あのさぁ、ゆづる君って何者なの?この間もクラス1マッチョなA男くんに腕相撲挑んで、開始1秒で回し蹴り食らわしてたじゃん。すごい乱闘になってたよ。」
「あー、なんでだっけなぁそれ。」
「えー、忘れちゃったの?まぁ僕のごはんあげるから食べなよ。実は、ママの実家がコメドコロでさぁ、おいしいお米が・・」
「ん~なんでだったけなぁ」
「ちょっと聞いてよ。けどA男くん、僕のことバカにして、この前頭叩かれたところだし、ちょっとスッキリ・・え、もしかして!?」
「あ~思い出した!そのとき、”超人類シリーズ最強の男編”を読んでて、『腕相撲に勝つには頭を使え。いや、頭をうて。いけいけ勝っちゃえばいいんだよ!』って載ってて、その実験したんだったわ。」
たろうの無言は重く。目のよりどころに目をおちつかせ、揚々とする新入生たちに、風で騒ぐ幼さを垣間見たのであった。